zsupohs

鬱みたいな日記

古書モール

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 県境を越えて、茨城県特有のただっぴろい平面地区を南北に道路が分け隔てている、その道路から車を小道に逸らして少し走らせると、突如として、目の前に巨大な構造物が姿を現した。巨大といっても、それは地方の寂れた市街の建物にしては大きいという意味ではあるが、窓が殆ど見当たらない上にヒビとサビに覆われた巨大な"それ"の佇まいからは、生命感の欠如に由来した「彼岸」特有の威圧感が放たれており、実際以上の大きさに見えたのかもしれない。

 そこには昭和と平成が混在していた。老朽化したその建物の隣には、現代の茨城を具象するかのようにケバケバしい外観をしたパチスロ屋が屹立しており、燻んだ顔をした老構造体を圧迫している。

  私は意を決して、その"魔境"へ足を踏み入れることにした……。

 

 

 ハイ。

 エ〜、その建物は廃墟ではありません。廃墟同然なんですが。大変失礼な言い方でとても申し訳ないんですけど、まあすごく寂れているんですよね。その建物はRibraというショッピングセンターなのですが、ここがすごいよ!建物なんですね。例をあげれば、

  • 時代が昭和で止まっている為、空調がなく扇風機をたくさん回して対処している
  • 時代が昭和で止まっている為、現代的な専門店は殆どなく地域のお店?っぽいので埋まってる(ダイソーはある)
  • エスカレータが階段になっている
  • パチスロ屋が隣接している
  • マネキンが怖い
  • とにかく人がいない

昔は流行っていたのかもしれませんが、今は需要が低迷したのか、あまり人気がないようです。先日行った中野ブロードウェイは確かに異次元的でしたが、ここはもう一つ加えた異次元、空間どころか時間さえも無理やり歪ませてくるような、ひょっとして私はタイムスリップに成功したんじゃあないか……とさえ考えてしまう、昭和レトロの空気に満たされた空間でした。

 なぜ、あまり流行っていないここへわざわざ来たかというと、ここに古書モールがあるということを知ったからです(ちなみに、茨城県には「退廃と悪徳の街」と呼ばれる土浦にも古書モールがあります)。実際来てみると、結構売り場面積も広く、意外にも充実した品揃えだなという感じがしました。

 古書モールはショッピングモールの2階に存在しており、コミックや図録、文庫本、専門書、和装本から木彫りの熊までが敷地内に一見雑然としながら丁寧に置かれておりました。店内にはほとんど人影がなく、人が来たらと思ったら、いつのまにかいなくなっています。滞在しているうちに、古書が醸し出す時間の重みがどっしりと独り身に沁みていき、なんとなく心地よい気分になります。そうかと思いきや、隣接するパチ屋の騒音が自動ドアが開くたびに軽快に鳴り出し、意識が急速に現在へと引き戻され、やがてまた遊離していく……なんだか非日常的な気分にさせる空間を作り出していたように思えます。

 ジャンルの幅や量は土浦の古書センターと比べるとやや見劣りします。人文科学系や社会科学系の本がやはり多い傾向ですが、文庫や新書も平均的な古書店一つくらいにはあります。陳列棚で個人的に興味を持ったのは、罰当たりなことに中途半端で終わってる御朱印帳や、美しい装幀をした国木田独歩の著作集、浄土真宗の信者向けスターターキット、写真豊富な小綺麗目の鉱石図鑑、装幀がオシャレなのですきな有朋堂文庫の本達……などなどありました。

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*1

やはり、古本は楽しいですね。自分は浅学非才なので読める本も限られてますが、単純に装幀が美しい本を見ると、惚れ惚れしますね。特に戦前戦中や戦後間も無くに刊行された、旧字旧仮名で書かれたきっちりした専門書とか読んでみると、高尚な人種になつたかの樣な、嚴かな氣持ちになります(実際はバカな小市民です)。

 

東京でも、今月15日まで渋谷大古本市が開催されているようで、茨城県郊外の寂れて死んだショッピングセンターに行くよりもそっち行った方が楽しいんじゃないかと思います(台無し)。

 

*1:本物の女の子と思ってびっくりしたやつです